<タクシー接待>上客を抱え込み…バブル後に常態化
深夜帰宅で利用したタクシー運転手から財務省職員が現金や金券の提供を受けていた問題で、運転手らの証言から過剰接待の実態が明らかになった。業界では「居酒屋タクシー」などと呼ばれ、約20年前から常態化していたという。国土交通省はタクシーが客に現金を提供する行為は道路運送法に違反するとの見解を示しており、波紋は広がりそうだ。【曽田拓、内橋寿明、窪田弘由記】
◇元祖は朝食提供
複数の個人タクシー運転手によると、客に酒やつまみなどを提供するタクシーは主に個人タクシーで、業界では「居酒屋タクシー」や「スナックタクシー」と呼ばれている。早朝出勤や深夜帰宅の多い航空会社職員を顧客に持つ運転手が、朝食のおにぎりや夜食の弁当とビールをサービスで渡していたのが広まったとされる。ある個人タクシーの運転手は「もう20年ぐらい前からやっている」と話す。
その後、他の民間企業や官公庁の顧客にも拡大。バブル景気でタクシーが不足していた時期は、顧客が「帰りの足」として得意先の運転手を見つけていたが、今は立場が逆転。運転手が、客をつなぎ留めるために過剰なサービスを始めたケースのほか、上客に名刺を渡して個人的に「営業」をかけたり、小さなグループを作り客を融通しあうといったケースもあるという。
◇一線越えてる
霞が関を営業エリアとしている60歳代の運転手は「客に『このタクシーはビールを置いてないのか』と言われ、驚いたことがある。自腹でビールなどを用意してまで、携帯1本で長距離が約束される上客を抱え込みたい気持ちは分かるが、役人相手にやるのは(モラルの)一線を越えてしまう気がする」と話す。
東京都内では最大の個人タクシー組合で、「でんでん虫」マークで知られる都個人タクシー協同組合(中野区)は「アルコールの提供など、運賃の割り戻しにあたるものは禁止している。タクシーチケットは組合と顧客で団体契約を結んでおり、運転手が個人の利益を求めるのは組合として迷惑だ」と困惑する。
「ちょうちん」マークの日個連東京都営業協同組合(豊島区)の役員は「割り戻しやチケットの金額上乗せは、発覚すればペナルティーを科している。安全、快適な運転という本来のサービスではなく、ビールで競争するようでは情けない」と話す。
◇職員処分へ
額賀福志郎財務相は6日の閣議後会見で「公務員は公正に国家国民に奉仕するのが仕事。あるまじき行為でショッキングに受け止めている。常識的には考えられない」と不快感を示し、関係した職員を処分する考えを示した。冬柴鉄三国交相も閣議後会見で「現金については料金の割り戻しに当たる」とし、道路運送法に違反するとの見解を示した。しかし飲食物については「営業努力の範囲内ではないか」と問題がないとの認識を示した。
6月6日13時46分配信 毎日新聞
